今は大都市圏に住んでいるけれど、ゆくゆくは地方への移住を考えたい。でも、具体的な移住先探し、住む街の選定はまだこれから。今回はそんな方のために、移住先選びと見極めに役立つチェックリストをまとめてご紹介します。
気候風土、暮らしの利便性、その土地ならではの付加価値、メリット・デメリット、そして生活にかかるお金や子育て環境のことなど、若手移住者からシニア世代の移住者まで、後悔、失敗しない地方移住のために欠かせないチェックリストです。
自分が暮らしていける「暑さ、寒さ」の土地かどうか
※写真は夏の長野県軽井沢町、浅間山の風景
地方への移住を考える際、最も基本となる要素の1つがその土地の「暑さ、寒さ」との相性です。同じ日本の中でも東西南北、住む場所によって気候は大きく異なります。例えば「日本一寒いまち」を掲げている北海道陸別町の場合、冬場の1月の平均最低気温は-20.2℃を記録したことも。
一方で「日本一暑いまち」を掲げる埼玉県熊谷市の場合、夏場の8月の平均最高気温は31℃、最も暑い日は41℃を記録しているケースもあります。これらは極端に寒い、暑い時の事例になりますが、年間を通じて自分が暮らせる気温範囲の土地であるかどうか、事前に確認しておくのは重要です。
自分が暮らしていける「晴天日数、降水日数」の土地かどうか
※写真は茨城県取手市、雨が降るJR取手駅前の風景
その土地の「晴天日数、降水日数」との相性も、暮らしていく上で重要なポイントと感じる人が多いです。例えばウェザーニューズ社の調査結果(2021年)によると、昼間晴れた時間が最も長かった都道府県(年間)は1位が神奈川県、2位が山梨県、3位が東京都。逆に昼間晴れた時間が最も短かったのは秋田県、続いて青森県の順番となっています。
また、同じ調査(2021年)で降水時間が最も長かった都道府県(年間)を見てみると、1位が石川県、2位が富山県、3位が福井県となっています。北陸地方にずっと住んでいれば慣れた話かもしれませんが、他地方から移住する場合は洗濯物の乾きやすさはもちろん、湿度による影響、人によっては慣れるまでメンタル不安気味だったという声もあったりするので注意が必要です。
雪が降りやすい地方であれば、「降雪日数、積雪量」もチェック
※写真は富山県富山市、雪景色が美しい富山城の風景
気候面に関してはもう1つ、雪が降りやすい土地であれば「降雪日数、積雪量」をチェックしておく方が良いです。ウェザーニューズ社の調査結果(2021年)を例に挙げると、雪の降った時間が最も長かった都道府県の1位は青森県、2位は北海道、3位は富山県、4位は石川県、5位は新潟県となっています。
冬場の雪が多い地方、地域に住むと、車のスタッドレスタイヤが必須になったり、生活の中で家や車庫の雪かき、除雪に時間を使うシーンも出てきます。また、ストーブなどの暖房設備も必要になり、灯油を使うケースも出てきます。
ちなみにもし雪かきの作業負担を避けたいという場合は、雪かきが必要ないマンションを敢えて選んで住むという方法もあります。東京から札幌に移住した人の中には、最初は敢えてマンションを選び、慣れてから戸建住宅に引っ越したというケースもあったりします。
自然災害リスクをどこまで考えるか、ハザードマップでチェック
※写真は大分県別府市、おんせん県の名所の1つ、海地獄
移住先を探す際、自然災害リスクを気にする声も多いです。ただし、前提として自然災害リスクは考え始めるとキリがないものであり、全国どこに住んでも何らかのリスクは必ず存在します。そのため、リスクをどこまで考え、気にするか、逆を言うと受け入れるかがポイントになってきます。
例えば活火山が近い街に移住すれば噴火のリスクはゼロではありません。その反面、活火山が近い街には豊かな温泉が多く湧出していることが多いです。また、海に面した街であれば地震発生時の津波リスクがゼロではないかもしれません。その反面、海景色のある暮らしで魚料理が美味しく、海遊びやマリンスポーツも身近になる暮らしが実現できます。
こういった観点を踏まえた上で、自然災害のリスクを一定確認し、調べておきたい場合は国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト(https://disaportal.gsi.go.jp/)」をチェックしてみるのをおすすめします。気になる地域を入力するだけで、その地域が公開しているハザードマップを見ることができます。
地域の食文化、料理の味付け、調味料の好みや相性
※写真は秋田県男鹿市、なまはげ御殿ニュー畠兼の海鮮ラーメン
食文化の相性も移住先で暮らしていく上ではポイントになる場合があります。特に料理の味付けを決める「基本調味料のさしすせそ」に関しては地方、地域によって使い方、分量、好みも異なります。
「醤油」を例に挙げるとすれば、関東は濃口醤油で育った人が多く、関西は薄口醤油、九州は甘口醤油といった具合です。刺身醤油や蕎麦つゆの好みで気付く人も多いと思いますが、醤油、味噌類は自分が育った土地、長く慣れ親しんでいる土地のものを美味しいと感じがちです。
「塩」「砂糖」の使い方に関しても地域差が出ます。塩分摂取量に関しては全国的に見ると東高西低と一般的には言われますが、東北地方は料理に塩も砂糖も他地方よりは多く使うことでも有名です。大きな傾向としては東日本は「塩辛さ」、西日本は「塩甘さ」を好むと言われます。
その地域でしか味わえない魅力、価値観に触れる付加価値の有無
※写真は神奈川県茅ヶ崎市、夏のサーフィンと烏帽子岩の風景
移住先を探す中で醍醐味の1つとなるのが、その地方、その土地でしか味わえない、体験できないモノ、コト、魅力です。自然環境の豊かさ1つを例にとっても、海景色のある暮らし、清涼な山や森の中での暮らし、普段は自然と利便性のバランス感が良い中都市規模の街に住みながら、週末に車で自然の中に出かけるといった選択もあったりします。
また、雄大な自然を感じる街、歴史情緒溢れる街、農産物や海産物が新鮮で安くて美味しい街、毎日温泉に浸かりながら暮らせる街、登山やサーフィン、ダイビングなどの趣味に没頭できる街など、自分の価値観の琴線に触れる、理想とする癒やしや楽しさが感じられる街を見つけるのも重要です。
例えば「おんせん県」として有名な大分県は、源泉の数、温泉湧出量、泉質のバリエーションの多さで圧倒的な日本一、世界でも有数の街だったりします。別府市はもちろん、大分市内にもたくさんの天然温泉、スーパー銭湯が当たり前のように存在し、山の秘湯ならゼロ円(寸志)、市内の温泉でも500円以内というところが多く、事あるごとに温泉に浸かる文化があります。
公共交通機関、地域の交通インフラの充実度、利便性
※写真は埼玉県秩父市、西武秩父駅前の風景
移住先を探す際、電車や飛行機でアクセス、往来しやすい地域であるかどうか、また、市区町村内を走る電車やバスの路線数、運行本数、運賃は充実しているか、最低限の利便性が確保できるかどうかも当たり前に気になると思います。これらは日々の通勤通学から実家への帰省、都市部への出張に至るまで、人によって気にするポイントの詳細、ウェイトが少しずつ異なります。
こちらについて事前に理解しておきたいのは、地方の街は大都市ほど電車やバスの路線、運行本数が充実していないため、やむを得ず車社会になってしまっているという点です。そのため、近年は各地方で公共交通機関の路線網や運行本数を維持するために、積極的に利用を促す取り組みなども行われています。
大都市から移住する際、公共交通機関で移動できるインフラが最低限整っておいて欲しいという場合は、人口10万人以上の市、または福岡県糟屋郡粕屋町のような大都市に隣接する町を候補地として考えてみるのもおすすめします。粕屋町は博多駅まで普通電車で12分、西鉄バスも多く走っているような立地の町です。
万が一の時の地域内の医療機関の充実度、利便性
※写真は茨城県常陸大宮市にある志村総合病院
小さな病気や怪我であれば、地域のクリニックや診療所で事足りることも多いものの、万が一の場合は総合病院や専門病院にかかる、搬送されるケースもないとは言えません。特にシニア世代の場合は継続的に病院に通うことも考えられるため、事前に地域内の医療機関の状況をチェックしておくことをおすすめします。
一般的には大都市であればあるほど、大きな病院や専門病院が充実しているものの、地方の一部には総合病院が充実している市町村があったりします。例えば鹿児島県徳之島町は人口1万人程度の離島の町でありながら、地元の徳之島徳洲会病院は急性期から慢性期、療養、在宅医療まで手掛けている病院としても有名です。
ちなみに私たちが運営している移住口コミサイト「Regional(リージョナル)」に寄せられる口コミの傾向を見ていると、近年、小さな市区町村の場合は産婦人科、小児科が少ないという声もありました。出産を控えている妊婦さん、小さな子供がいる家庭の場合も移住前に確認しておくのをおすすめします。
生活必需品の買い物スポットの有無、距離、利便性
※写真はスーパーマーケット店内の陳列棚の風景
移住先の市区町村、市区町村内で実際に住むエリアによっては、毎日の生活に必要なスーパー、コンビニ、ドラッグストア等の充実度が変わってきます。近年は昔よりも大手チェーン店が全国各地にこまかく出店しているため、スーパー、コンビニ、ドラッグストアがないような地域は減っていますが、車で何分の距離か、徒歩圏内であって欲しいのか、複数店あって欲しいのかによっても見方は変わってきます。
また、もう1つ注意しておきたい点は営業時間と品揃え、価格です。例えば洞爺湖で有名な北海道洞爺湖町の場合、町内にあるスーパーは2軒、そして19時頃には営業時間が終了してしまうため、早めに買い物をしたり、ある程度買い貯めしておくような地域もあったりします。また、商品の輸送費がかかる離島などの場合は価格が高くなってしまうというケースもあったりします。
特に田舎暮らしのスローライフを求める場合は、こういった点があることも知っておくのが大切です。田舎に暮せば生活のリズム自体が変わるため、慣れていく面もありますが、地域の買い物事情については知っておいた方が良いです。
生活必需品以外の買い物スポットの有無、多さ、少なさ
※写真は京都府京都市、2021年にオープンした商業施設、京都河原町ガーデン
そして買い物に関してもう1つチェックしておきたいのが、生活に必要な食料品や日用品以外の買い物スポットの有無、距離についてです。例えば女性の方に多いのは、好みの服、コスメ、ファッションを見ることができる、選ぶことができる大型商業施設の有無や都市圏までの距離感です。
近年はネット通販がかなり進化しているため、商品自体はECサイト購入で手に入れることができるものの、30代以降の世代の場合、買う前に見て選びたいという意識が強いケースも結構あります。自分自身の考え方、結婚している場合は夫婦の考え方を確認し、こういった買い物スポットがどこまで必要か、近い方が良いのか、話し合っておくことをおすすめします。
外食グルメ、娯楽、余暇が過ごせるスポットの多さ、少なさ
※写真は北海道函館市にあるラッキーピエロ ベイエリア本店
移住して理想に近い住環境、暮らしを手に入れた後は、気分転換できるスポットや余暇が楽しく過ごせるスポットが欲しくなるものです。最も身近なものとしては外食が挙げられますが、好きな店、行きつけにできそうな店を見つけておけばOKという人と、色々な選択肢、バリエーションを楽しみたいという人とでは外食グルメに対して求めるものが違います。この点に関しては移住前に旅行で現地に足を運び、自分自身や夫婦で楽しいと感じる店があるかどうか、価値観のすり合わせておくのをおすすめします。
ちなみに地方に住んでいる人に地元の魅力的なスポットを尋ねると「都会と違って何も娯楽がないよ」と言う人も多いです。これは大きな施設、専門の施設、最先端の施設のような箱物、ハード面を指していることが多いため、この点はそこまで神経質に捉えない方が良いです。自然の恵み、ありのままの良さ、人間味のある暮らし、都市と田舎のほど良いバランス感があるかどうか、こういった点に共感する地方移住であれば、きっと自分の価値観に合う余暇の過ごし方が見つかると思います。
自動車の必要性、ガソリン代を含む維持費はどのくらいか
※写真は長崎県長崎市、車が多く走る長崎駅前の風景
公共交通機関の充実度の項目でお伝えしたように、地方の街は電車やバスなどの公共交通機関が大都市ほど充実していないため、車での移動に頼らざるを得ない現実もあります。一定規模の都市の駅近範囲に住む以外は、車がないと日々の通勤や買い物、子供の送り迎え、遊びに出かける場面でも支障をきたしてしまいます。また、夫婦で共働きの場合は自家用車を複数台持っていたりするのも普通です。
加えて雪が多い地方に移住する場合はスタッドレスタイヤを数年に一度の間隔で購入する必要があり、雪道や凍結した路面を走ることにも慣れていく必要があります。ガソリン代も世界情勢次第で価格が上がったり、地方ごとに販売価格が異なってきます。地方移住によって住宅費や生活物価、電車代、サービス購入費用は安くなることが多いですが、ガソリン代、車の維持費は都市部に住んでいた頃と比較すると確実に上がります。相殺して毎月どのくらいのコスト、家計になるのかを考えておくのは重要です。
水道光熱費(電気、ガス、水道)の高さ、低さ
※水道代は高い街と安い街で最大6000円前後の差が出ることも
引っ越しして住む地方、住む地域が変われば、毎月の水道光熱費も変化します。例えば東京から札幌に移住すると冬場の暖房にかかる電気代や灯油代は増えます。一方で夏場の冷房にかかる電気代は少なくて済みます。これを年間ベースで考え、どのくらいの電気代になるかを意識しましょう。ちなみに電気代に関しては電力自由化に伴って電力会社が選べるようになったため、引っ越しを機に割安の会社に乗り換えたという声も多かったりします。
水道光熱費の中で特に注意しておきたいのはガス代と水道代です。大都市圏に住んでいると都市ガスが当たり前と感じますが、地方移住の場合は都市ガスが通っていないエリアも多いです。その場合はプロパンガスでの暮らしに変わりますが、プロパンガスは輸送、設置に物流費や人件費がかかるため、ガス代の基本料金が都市ガスよりも割高になります。この点は郊外、田舎へ引っ越すと必ず出てきますので、住む地域、物件のガス設備を確認しておくのは大切です。
また、水道代に関しては高い街と安い街で月当たり最大6000円前後の差が出ると言われています。全国的に見ると東高西低の傾向で、東北地方や北海道に移住する場合は水道料金が大きく上がると思っておいた方が良いです。ちなみに水道料金が日本有数の安さで知られているのは兵庫県赤穂市や愛媛県西条市です。住むエリアによっては上水道代がかからず、下水道代のみの支払いで済んでしまうようなケースもあったりします。
ごみ出しのルール、分別や指定ごみ袋の有無、回収頻度
※ごみの分別ルールの緩さ、厳しさ、回収頻度は自治体ごとに異なります
住み慣れた街から新しい街へと移住した時に、案外変わってくるのが「ごみの出し方」です。簡単に言うとごみの出し方に関するルールが緩い自治体と、そうでない自治体があったりします。多くの人は移住前の自治体のルールを標準的に捉えがちなので、ごみ出しが楽になったと感じる人と負担が増えたと感じる人の差が生まれてくるのです。
具体的な例を挙げると、大阪市は全国の中でもごみの出し方に関するルールが緩い自治体です。(現時点では)指定のごみ袋がなく、透明もしくは半透明等のごみ袋を代用できるため、ごみ袋にお金がかかるという意識も薄かったりしますし、ごみの分別も最低限で済んでしまいます。その他に福岡市はごみの回収が夜間のため、日没から夜12時までの間にごみを出すというのが当たり前の暮らしになります。
逆にごみの出し方に関するルールに敢えてこだわっている自治体の1つが徳島県上勝町です。(現時点では)分別が13種類、45品目と多岐に渡るため、自宅に設置するごみ箱の数も必要になりますし、そもそもごみになるものを極力買わない、置かないという意識も必要になってきます。ちなみに生活者視点で考えれば不便に思えますが、町全体のごみが減り、リサイクル率が劇的に向上したことで、ごみ処理にかかる毎年のお金も少なくて済むようになっています。
地域の治安や騒音事情、落ち着いて暮らせるかどうか
※写真は北海道最大の歓楽街、札幌市すすきの風景
移住先を選ぶ際、その地方、その地域の中のどのエリアに住むかによっても治安、騒音等の事情は異なってきます。どの市区町村であったとしても、落ち着いて暮らせる治安の良いエリアとそうとは言えないエリアがあるのも現実だったりします。これらは土地の価格や賃貸物件の家賃に反映されていることも多いため、物件情報サイトをチェックし、気になる地名+歴史などのキーワードで検索をかけてみることをおすすめします。
ちなみに私たちが運営している移住口コミサイト「Regional(リージョナル)」でも、各市区町村の中でこれから住むのにおすすめのエリア、あまりおすすめできないエリアなどの声も集めてご紹介しています。気になる市区町村があればこれらの口コミもぜひチェックしてみてください。
地元の人たちのとのコミュニケーションの取りやすさ
※田園風景が広がる田舎町では互助のコミュニティを知るのも大切
地方移住を考える場合、一定規模の都市に住むのであればそこまで深く意識する必要はありませんが、人口が少ない町で田舎暮らしを考える人の場合は、地域内での「ご近所付き合い」も快適に暮らす上でのポイントになったりします。移住先によっては自治会があり、いくらかの会費を負担する場面があったり、時には自治会の仕事を手伝う場面も出てくるかもしれません。
そもそもその地域で暮らす人たちとのコミュニケーションの取りやすさも大切になりますし、あなた自身が都会から移住してきたからといって、上から目線のコミュニケーションにならないよう、注意を払うことも大切です。近年は自治会、町内会と言うとネガティブに受け取られがちですが、地域の子供の安全を見守ってくれたり、地域の人たちが楽しみにしているイベントを支えていたり、万が一の時に助け合う仕組みにもなっていたりします。
子供の医療費助成、保育料軽減や子育て支援の充実度
※写真は病院の待合室の風景
出産を予定している夫婦、小さな子供がいる家庭であれば、子供の医療費助成に関しては非常に気になるポイントのはずです。実は子供の医療費助成は自治体ごとに差が大きく、積極的に助成することで子育て世代の移住を促す市区町村もあれば、最低限の助成に留まっている市区町村もあります。
全国的に有名なのは兵庫県明石市で、子育て支援の5つの無料化と題して、高校3年生まで医療費が無料、第2子以降の保育料が無料、中学校の給食が無料、子供の遊び場となる公共施設の充実と無料、赤ちゃんが1歳になるまで無料のおむつ定期便といった施策を掲げて移住者を増やしています。
一方で同じ兵庫県の中でも西宮市は、交通や生活の利便性の良さから関西の中でも屈指の人気移住先となっていますが、実は子供の医療費助成に関しては1歳以上から一定の自己負担が発生したりします。何歳まで、入院、通院時に自己負担はあるのか、その他に公的な支援はあるのか、こういった点を事前に調べておくのをおすすめします。
子育て環境、自然の豊かさや公園などの遊び場の充実度
※写真は茨城県ひたちなか市、国営ひたち海浜公園に咲くネモフィラの風景
子育てにあたって気になることのもう1つが、のびのびと子供を育てられる環境の土地であるかどうかです。子供を持つお母さんの声を聞くと、山や川、森や海の豊かさの話だけでなく、近郊に整備された公園があるかどうか、定期的に遊び行ける程度に遊具が整っているかどうかも気になるポイントとして挙げられることが多いです。
また、この点に関しては日常生活で遊びに行ける公園の存在だけでなく、BBQやキャンプなど、アウトドア全体が楽しめるスポットがあるかどうか、車で行ける範囲かどうかを見ている人も多いです。加えて雪や雨が多い地方に住む場合は、子供を遊ばせることができる屋内施設があって欲しいといった声も比較的多くあります。
屋内施設に関しては自治体が運営する子育て支援施設の存在、地域にこどもみらい館や児童館があるかどうか、地域の子供たちやママさん同士が交流できるコミュニティ、子育ての悩みを相談できる専門職員がいる拠点があるかどうかを事前にチェックしておくことをおすすめします。
子供の教育進学、小中学校の距離や高校、大学等の選択肢
※写真は東京都新宿区、早稲田大学の大隈記念講堂の風景
子育てに関して中長期的な視点で見ていくと、子供の教育進学に関する検討、判断も必要になってきます。まず、小学校や中学校に関して地方の場合は公立校へ進学するケースがほとんどです。そもそも大都市圏ほど私立校が存在しておらず、あったとしても選択肢が限られるためです。逆を言うと小学校、中学校の間は大都市圏よりも学費に関するお金が少なくて済むというメリットもあります。
また、高校進学に関しては別の街まで通学する子供と地元の中で進学する子供とに分かれる傾向があります。この点は大都市圏に住んでいても似たような傾向があります。例えばさいたま市内から東京都内の高校まで通うのと同じように、地方の場合も近隣の市まで通うケースはよくあります。この場合の注意点は自転車や電車で通えるか、車での送迎が必要になるかといった点です。
そして大学進学に関しては、地方の方がお金がかかる傾向です。大きな大学があるのは地方の中核都市だったり、大都市圏だったりするため、自宅から通えない進学先の場合は一人暮らしを始めることになります。大学の学費と家賃の支払い、子供への仕送りを賄うこの時期は、家計の金銭負担が重くなるため、それを見据えた積立や学資保険などの備えが必要になります。
転職なき移住か、移住先で新たな仕事を探すのか
※青空の下でも作業ができてしまうテレワークの時代
世界的な新型コロナウイルスの感染拡大が始まって以降、テレワーク(リモートワーク)という画期的な働き方が誕生し、一気に普及しました。この点は地方移住を考える人にとっては明らかな追い風です。また、2020年12月からは国の地方創生UIJターン移住支援金の要件が緩和され、転職せずにテレワークなどで働く地方移住者も100万円の支援金対象に加えられました。
先進的な企業の場合はテレワーク前提の地方移住を前向きに認めるケースも増えていますし、そもそもパソナグループの淡路島への本社移転、アミューズ社の富士河口湖町、小田急電鉄の海老名市、紅茶店を全国展開するルピシア社のニセコ町など、企業そのものが地方へ移転、分散する動きが加速しています。これは企業にとっては固定コストの削減だけでなく、地方拠点強化税制(課税上の優遇)や、災害発生時でも事業が継続できるように本社機能を分散させる動きが世界的なトレンドになっているのも一因だったりするためです。
一方でもし転職することを前提に地方移住を考える場合は、よほどの自信やツテ、経済的な余裕がない限りは転職先を確保してからの移住をおすすめします。よく地方には仕事がないと言われますが、正確に言うと仕事自体はたくさんあります。ただ、自分の思い通りの業種や職種の仕事が少なかったり、給与水準が大都市と比較すると低くなる傾向のため、自分自身が納得できず、仕事を決められないという問題が発生するためです。
ちなみに近年は一定規模の地方都市への移住を考えるのであれば、UIターン転職の求人情報を扱う転職エージェントもあります。まずはこういった転職エージェントで情報収集をしてみたり、Indeedのような求人情報検索エンジンで求人動向を調べてみる、またはハローワークインターネットサービスのようなサイトで地域の求人情報を検索してみるのが良いでしょう。
地方創生UIJターン移住支援金が出る自治体、出ない自治体
※写真は北海道札幌市、幌見峠ラベンダー園から見る札幌の街並み
2014年に地方創生に関する政策が発表されて以降、人口の一極集中の是正、地域の持続可能な発展は重要な国策となっています。2021年にはデジタル田園都市国家構想も発表され、地方の官民に対するデジタル投資を大胆に加速させようとしています。そんな中で移住者が最も身近に感じられる支援の1つが、「地方創生UIJターン移住支援金」です。
これは東京圏から地方へUIJターンする移住者を対象とした支援金制度で、起業、就業(転職、再就職)を伴う移住者に対して最大300万円の移住支援金を支給する制度です(単身者の場合は最大260万円)。こういった支援金はぜひとも活用すべきですが、この移住支援金制度に参画している自治体と参画していない自治体があるので注意が必要です。
例えば2022年現在、大阪市や福岡市といった自治体は移住支援金制度の対象外となっています。一方で札幌市や仙台市、名古屋市といった自治体は移住支援金の対象地域となっています。基本的には全国の多くの自治体が移住支援金制度に参画していますが、支給条件は自治体ごとに一部異なる部分もあります。移住前に必ず自治体のホームページで要件をチェックしておくことをおすすめします。
自治体独自の移住助成金、お試し移住等の支援制度の有無
※写真は山口県下関市、絶景橋として知られ、CMにも使われた角島大橋
その他にも地方創生UIJターン移住支援金とは別に、自治体が独自で移住者に対して助成金を出していたり、スムーズな移住を支援してくれる制度があったりします。例えば福島県や福井県、山口県などは移住に向けた下見や就職活動に必要な移動交通費を一部負担してくれる制度があったりします(2022年5月時点)。また、長野県や大分県などの一部市区町村にはお試し移住が体験できる住宅や宿泊補助が用意されていたりもします。
その他にも山口県下関市、宮城県七ヶ宿町、茨城県常陸太田市、大分県豊後高田市などのように、一定条件を満たす場合は土地や住宅を無償で譲渡してくれるような自治体もあったりします(2022年5月時点)。今後、移住者の獲得に力を入れる自治体がますます増えると予想されているため、こういった自治体独自の助成や支援制度もチェックしておくのがおすすめです。
【最後に】二拠点生活やちょっと暮らしから移住を考えるのもおすすめ
※写真は北海道釧路市、阿寒湖と雄阿寒岳の風景
もし移住に対して迷いがある場合は無理をせず、まずは「二拠点生活」や「ちょっと暮らし」という形で動いてみるのもおすすめです。少しずつその土地の理解が深まり、その土地で暮らす人たちとのコミュニケーションを通じ、自然と自分や家族の気持ちがクリアになってくることもあります。
例えば北海道釧路市は「長期滞在(ちょっと暮らし)」で人気の高い街です。夏場の避暑をきっかけにちょっと暮らしを体験し、釧路の雄大な自然、街の魅力に惹かれていくケースもあったりします。2020年度には1,644人の方が長期滞在を体験したそうですので、こういったケースも参考に楽しみながら相性の良い移住先を探していくようにしましょう。